2025/09/29世間の学校
人を読む「神田 真人」(前財務省財務官、アジア開発銀行総裁)
世界的に見て、日本の政治状況は極めて安定したものとして高い評価を受けている。外
国人旅行者が多いのも、そうした一面を反映しているともいえる。ところで、その理由は、
自民党の安定的な政権継続とその政治を支える官僚機構がしっかりしているからといわ
れている。特に縁の下の力持ちとして、政治家をしっかり支えている日本の官僚機構は高
い評価があるが、ここにきてほころびが出始めている。昨年、財務省を退任して、現在は
アジア開発銀行総裁として ASEAN の国々と日本の架け橋となっている。安倍政権時代に人
事(内閣の任命権)を通して官僚をコントロール(優秀な官僚よりもイエスマン官僚を重
視)し始めたことから(今のアメリカ大統領トランプ政権も似たような状況にある)。優
秀な官僚のなり手が減っているという。
東京大学か京都大学の優秀な人材がなかなか官僚になろうとしないからである(東大、
京大の就職先ランキングで異変が起きている。かつては、日本の社会をよくしたいと志の
高い優秀な人々が官僚、特に財務省、経済産業省、外務省、裁判官・・・等を目指してい
たが、今ではボストンコンサルティンググループ、アクセンチュア、デロイトといったコ
ンサル会社への志望が多いという。年収 530 万対 1,500 万の差はあまりにも大きい)。し
かし、この人は、そんな官僚の枠を越えて日本をよくしたいという高い志から官僚であり
続けており、その人脈の幅広さ、教養の深さから「宇宙人」ともいわれている。それが神
田真人氏だ。
生まれは、兵庫県西宮市。父は普通のサラリーマン。父の転勤で浜松そして、神戸市へ。
灘中→灘高→東大文Ⅰ、財務省へとエリート街道まっしぐら。そして、財務省では、次官
級ポストといわれる財務官を 2024 年 7 月までの 3 年間。国際会議や為替政策を担当。公
的セクターから社会を支えたいという強い信念は学生時代に見た映画、黒澤明監督の「生
きる」(無気力な役人が末期の胃がんになって余命幾ばくとなって初めて自己の使命に気
づき社会のために働き死んでいくという話)を見て自分の使命感を感じたのが官僚の原点
(今は、このような人が官僚に少ない)。この人くらいの能力があれば、お金が欲しけれ
ば、民間ではいくらでも就職できるが彼にはそんな気持ちはないらしい。将来の日本銀行
総裁の有力候補者ともいえるだろう(前日本銀行総裁の黒田東彦氏も財務官からアジア開
発銀行総裁を経て日本銀行総裁になっている)。逸材は大切にしたいものだ。