2025/04/07世間の学校
言葉は語る「関税」
アメリカ第 47 代大統領のトランプ氏の登場によって、注目される言葉の 1つが「関税」。
彼は自らを関税男(Tariff Man)と称し、自身の最も好きな言葉の 1 つが関税という。
ところで、関税とは一体何なのか。それがもたらす影響はどうなるのか。世界中が今、
戦々恐々としている。
有斐閣の「経済辞典(第 5 版)」によると、関税とは、「租税の一種で外国から輸入され
た貨物、外国へ輸出する貨物または自国を通過する貨物に対して賦課される税金」とされ
ている。ただし、現在、少なくとも先進国では後者の場合は、極めて少ない」とある。外
国からの輸入品に対する課税が中心と言えそうだ。
関税を実際に支払うのは輸出する外国企業ではなく、輸入する自国内の企業。通関業務
を通して自国内の輸入業者が税関に関税を納付してその分だけ輸入品に上乗せされる。そ
のため、自国民はその分高い値段で買わされることになる。そのため、物価高として、国
民生活を苦しめる事になるといわれている。もし、それよりも安い国内品があれば、需要
は安い方に行く(質が同じなら)。国内企業の価格競争力はつくが、品質を無視した価格
競争力の時代ではない今日、高い関税を課したからといって、国内企業の生産活動が活発
になるかどうかわからない(トランプ大統領は自動車や鉄鋼の競争力の回復、輸出拡大を
狙っているようだが)。関税引き上げの経済効果は、もう少し時間をかけて見る必要があ
りそうだ。
実はこの問題は、自由貿易対保護貿易の対立で古くて新しい問題でもある。大人同士の
戦いなら自由貿易が良いとされている。お互いの強みを生かし強みに特化して国際分業が
行われるならば、より良いものを、より安く購入することができ、お互いが利益になる。
自由貿易が推奨される理由である。しかし、大人と子どもの戦いの時はどうか。ハンディ
をつけなければ、戦いにならないのではないか。せめて、子どもが大人になるまでの一定
期間の猶予が欲しい。これが、保護貿易の主張である。幼稚産業保護の理由だ。ここでは、
保護の仕方や期限が問題となるが数量制限と価格制限があるが、価格制限の代表例が関税。
この他、安全保障上の理由から、たとえ割高となったとしても海外に頼らずに自国内で
の調達を考える場合もある。自由な貿易は、平和な時代(平時)を前提としており、ひと
たび戦争(有事)になると物資の購入が困難になることがある。(かつてのオイルショッ
クにおける石油の調達等)。そのために、余分に備蓄したり、一定量は割高でも国内産に
したりすることもある。経済の結びつきが深い現代社会にあって、二国間の経済問題とし
て対処する関税については、しっかりその影響を見極める必要がありそうだ。