会計事務所/税理士のための決算診断システム「社長の四季」

株式会社プロス/社長の四季

決算診断コラム

会計事務所経営・企業経営のお役立ちコラム

世間の学校
時流を読む「企業の在庫投資の動向-ふえる在庫とふやす在庫」

 経済社会の主要な担い手は企業。企業の経済活動の中心は投資。投資の中で中長期的な
動向は設備投資でわかる。短期については、在庫投資をみればわかる。
 在庫は、経済的な用語であり、会計的に棚卸資産といわれる。棚卸資産について、その
定義としては、「企業がその営業目的を達成するために所有し、かつ売却を予定する資産
のほか、売却を予定しない資産であっても販売活用及び一般管理活動において、短期的に
消費される事務用消耗品等も含まれる」とされている。その内容は、商品、製品、半製品、
原材料、仕掛品等がある。ここでは、経営的な意味での在庫を考えてみたい。在庫と言え
ば、製造業を例に取ると生産過程に入る段階での ①原材料在庫、製造過程に投入される
が未だ製品化される前の製作途上の ②仕掛品在庫、製造が完了して製品化されるも販売
として出荷される前の ③製品在庫 がある。更に卸売業や小売業が販売するために抱え
る ④流通在庫 の4種類があるといわれている。

 この在庫は果たしてどれ位保有すべきかについては、議論もある。余りに多くの在庫を
持つとどうなるか。売れ残り、場合によっては廃棄処分(食料品等、特に賞味期限のある
もの)によるロス、流行遅れや劣化(衣料品や家具等)の生ずるもの、更には在庫に対す
る金利負担や保険料や保管料が高額になる等、多大のコスト負担を生じる可能性がある。
逆にギリギリの最低限の在庫しかないと、生産すべき所なのに生産できない、販売すべき
所なのに販売できないといった機会損失を抱えることにもなる。ここから、適正在庫や無
在庫経営と言った考え方がでてくる。

 しかし、在庫の適正水準は、あくまでも個々の経営者が市場を読んで決めて行くもので
あり、一義的には決まらない。ただ、一般的には、デフレ状況の下では、作っても必ずし
も売れない状況であるので、少なめに。インフレの状況では、将来の値上がり見込みがあ
るので多めにという方向性はありそうだ。国内有力企業の財務諸表をまとめた財務省によ
る法人企業統計(2023年度)によると、企業の在庫は過去最高の水準にあるようだ。これ
は、感染症や紛争、戦争等による原料調達の困難を見越して、安定供給体制の構築への早
め、多めの在庫手当がなされているようだ。インフレの足音が聞こえてきそうだ。

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取締役会長
浅沼邦夫