2024/09/30世間の学校
人を読む「諏訪 貴子(すわ たかこ)」
日本の企業の 90%以上は中小企業。そして、中小企業で雇用される従業員数でも全雇
用者数の約 70%を占める。まさに日本経済を支えているのが中小企業といえる。中小企
業なくして、日本経済の繁栄はありえない。しかし、日本の中小企業は、さまざまな問題
を抱えている。
中小企業の大問題の 1 つが後継者難だ。創業者がせっかく一代で素晴らしい会社を作り
上げても、創業者も年令と共にいつかは会社を去って行く。次の新しく引き継ぐ経営者が
いれば、事業は継続していく。しかし、人財はそう簡単に見つからない。家族や社員に後
継者にふさわしい人材がいるとは限らない。諏訪貴子はそんな難局を乗り越えた異色の経
営者だ。2014 年 12 月にも取り上げたが、それから 10 年を経過して中小企業を取り巻く
経営環境も激変しているので再度取り上げてみたい。
1971 年東京都大田区に生まれ、1995 年に成蹊大学工学部を卒業、ユニシアジャックス
(現日立 stemo)に入社。1997 年に結婚を機に退職し、1998 年に父親が経営するダイヤ
精機(自動車関連の金型、ゲージ等の設計、製造)へ入社するも社長である父親と経営方
針を巡る対立が激しく、2 度の入社、退社をくり返す。2004 年に父親の死を契機として、
32 歳で再び入社して社長に就任し現在に至る。
従業員数は 20 数人で年商 2 億円を越える典型的中小企業。社内改革を推し進め、順調
に企業業績を上げ 2008 年には経済産業省「IT 経営実践企業」に認定され、2010 年には大
田区「優工場」認定。「人に優しい部門」部門賞を受賞。2013 年には、日本経済新聞の「ウ
ーマン・オブ・ザ・イヤー2013」大賞を受賞。現在、日本郵政の社外取締役にも就任して
いる。
女性の時代を見事に切り開いた先駆者的経営者。今では、女性の社長も珍しくないが、
当時は別世界。父親との確執を乗り越えたのも、父親の死を契機としており、大塚家具の
親子のバトルとは対照的ともいえる。新しい社風を構築し、育児と経営を両立させる若手
女性経営者の鑑ともいえるかもしれない。