会計事務所/税理士のための決算診断システム「社長の四季」

株式会社プロス/社長の四季

決算診断コラム

会計事務所経営・企業経営のお役立ちコラム

世間の学校
言葉は語る「投下資本利益率-Return on Invested Capital-ROIC(ロイック)」

 良い会社か悪い会社かを判断する指標には、どんなものがあるか。数多くの指標が考え
られるかもしれないが、たった 1 つの指標で判断できないか。そんな虫の良い答えがある
のだろうか。会社の利害関係者(ステークホルダー)は、それぞれ独自の視点で会社を見
ており、その判断資料はバラバラになるかもしれない。従業員は、もっと給料が出せる会
社を、株主はより多くの配当を出せるような会社を、取引先はより良い取引条件で長く付
き合ってくれる会社を・・・さまざまな要望に応える基本は良い会社であること。

 一般的には、会社の優劣を計る尺度として考えられたのが、総資本利益率(ROA)、B/S
の借方に注目して会社が保有している全財産が P/L の利益をどれだけ産み出したかを見
る尺度。長い間、財務分析の優等生として、君臨してきた。手持ちの全財産をどれだけ有
効に活用して、利益を生んだか。しかし、資産の中に不良・不稼働、不必要なものもあり、
必ずしも全資産の有効活用がなされているとは限らない。

 そこで登場するのが株主資本利益率(ROE)。B/S の貸方に注目。B/S は借方が資産の運用
形態、貸方が資産の調達形態を表わす。B/S の貸方の負債については、利息があり、P/L
上に計上されているが、株主資本に対しては、利息計上されていない。市場経済では、タ
ダ金はないはず。こうして、資本コストが株主資本利益率の計算として重視される。有利
子負債については、すでに支払利息として P/L 上に計上されており、むしろ費用化されて
いない株主資本に対する利益が問題ではないか。

 このきっかけとなったのが、2014 年 8 月に公表された「伊藤レポート」。株主資本はタ
ダ金と思って、資本コストを考えていない点が日本企業の生産性の低さの原因と指摘。こ
の利益率は最低でも 8%、できれば 10%位を目指すべきという。ここから、ROA から ROE
へ大移動。しかし、これで本当に良いのだろうか。ROE だと、一定の利益でも分母を小さ
くすれば up する。分母を小さくするためには借金して自社株を買えば良いとなり、実態
は変わらないのに ROE が良くなるという批判が生じる。

 企業の事業投資は、負債による調達(デッド・ファイナンス)と資本による調達(エク
イティ・ファイナンス)があり、これらに対してどの位の利益をあげたか。利益も最終利
益でなく、税引き後の営業利益を考えるべきではないか。こうして、現代では、この投下
資本利益率(ROIC)が目標とされている。最低 7%できれば 9%程度が目安とされている。
計算式は、営業利益×(1-実効税率)/有利子負債+株主資本。今のところ上場企業を
中心として採用されている指標であるが、中小企業に於いても検討されてはいかがでしょ
うか。

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取締役会長
浅沼邦夫