2024/07/01世間の学校
人を読む「平田 オリザ」劇作家、演出家、芸術文化観光専門職大学学長
1962 年生まれ、劇作家、演出家であると同時に 2019 年には家族で兵庫県に移住し、大
学の学長へ。その経歴のおもしろさと、父と子という特殊な関係は複雑なものがある。
親子のスタートは名前の命名。親は子どもにどんな名前を付けるか。自分の一字を取る
か、一家の伝統の一字を取るか、いろいろなことを考える。平田家は「オリザ」と命名。
その時はまさに、日本の高度成長時代である。父親は一生食いっぱぐれないようにとオリ
ザ(ラテン語で稲)と名付けた。変わった名前を付けるといじめや差別の問題が生じる可
能性もあるが、必ず他人から理由を聞かれることから会話ははずむ。こうして父親の職業
(シナリオライター)を踏襲しながら成長する。父親は、息子を学者か小説家にしたかっ
たというが、その通り実現した。国際基督教大学在学中に父親の作った「こまばアゴラ(ギ
リシャ語で人の集まるところ)劇場」を引き継ぐ。
16 歳の時に 1 年半かけて世界 26 カ国を回り、18 歳で世界一周旅行記を出版し、演劇の
道へ。その後「東京ノート」(94 年)、「月の岬」(98 年)、「上野動物園再々々襲撃」
(2001年)、「その河をこえて、五月」(02 年)等の舞台公演の他、「芸術立国論」(集英
社新書)、「わかりあえないことから-コミュニケーション能力とは何か」、「下り坂をそろ
そろと下る」(講談社現代新書)、小説「幕が上がる」・・・と芸術文化の発展に貢献し、
2021 年には兵庫県豊岡市の芸術文化の専門職大学の学長へ。父親の息子への一言「人と違わな
いとダメだ」が平田オリザの今日を作ったともいえる。「父親の一言、畏るべし」である。