2024/05/30世間の学校
人を読む「田中 弥生(たなか やよい)」
ボーダーレス、ジェンダーレス、エイジレスの時代になり、様々な領域で新旧交代、主役交
代が起こりがち。特に男女の世界で男性の指定席といわれた定位置に女性がどんどん就く時代
になってきた。仕事の出来る女性にとってビッグチャンス到来か。ところで、憲法は国家の基
本法であり、人権保障と統治機構により成立している。
日本国憲法では、個人の人権保障に手厚いばかりでなく、人権侵害が起きないように統治機
構に対して、抑制的である(3 権分立、権力分立)。立法権を担う国会、行政権を担う内閣、
司法権を担う裁判所がそれ。しかし、これらのトップに女性が就任する例は少ない(土井たか子
衆議院議長、扇千景、山東昭子の参議院議長くらいか)。憲法上は、これと別に独立した財政
監督機関として会計検査院を定めている。憲法 90 条第 1 項は「国の収入、支出の決算は、す
べて毎年会計検査院が検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともにこれを国会に提出
しなければならない」と定めている。国家予算は一般会計だけでも約 100 兆円以上を有し、こ
れに特別会計や財政投融資を加えれば膨大なものとなり、その財政監督機関としての役割は大
きい。
この会計検査院長に女性初の田中弥生が就任した。上智大学文学部を卒業(1982 年)して、
日本光学(現ニコン)に入社するも 3 年余りで退社。大学卒業当時、大卒女性を総合職として
採用する数少ない企業だったのがニコン。その後、求人報告に引かれて笹川平和財団へ。そし
て、P.F.ドラッカーとの運命的な出会いへ。ドラッカーの「新しい現実」に感銘し、ライフワ
ークとなる「非営利組織(NPO)」の分野に着目し「民間非営利セクターの研究で大阪大学博士
(国際公共政策)を取得する。転職だけでも 7 回を数えるキャリアウーマンが会計検査院の検
査官、そして検査院長へ。チャンスをモノにする人は、男であれ、女であれ、あくなき探究心、
執着心、フットワークの良さは不可欠なものといえよう。彼女はまさにその典型といえるかも
しれない。