2024/05/07世間の学校
言葉は語る「資本コスト」
資本コストとは、資本を調達するのに、一体どれ位のコストがかかるのか。資本主義的な市場
経済を前提とすると、全てのモノには、なんらかのコストがかかる。特に、資金を調達するには、
それなりのコストが不可欠。資金提供者が銀行等の金融機関であれば、金融機関に対する資本コ
ストは金利である。金融機関は金融市場の状況をベースとして相手方の信用力(元本、金利の支
払能力)を加味して一定の金利を設定する。この金利が資本コストであることは間違いない。そ
して、金利は支払利息として損益計算書に反映される。それでは、資金提供者が株主である場合
は、どうなるか。これが株主資本コストの問題である。会社は株主に対して、配当金を支払って
いるので、配当金が資本コストとする考え方がある。そして、この考えでは、利益のうち、配当
に回らなかった残りが内部留保として、コストゼロで会社が自由に使える資金であるとする考え
もある。
しかし、内部留保は、株主から提供された資本で獲得した資金であり、株主持分を構成する以
上、コストゼロは理解に苦しむ。配当さえ支払えば株主に対する義務は十分果たされたといえる
のかも問題となる。株主は、インカムゲインとしての配当ばかりでなく、キャピタルゲインとし
ての株式の値上がり益も求めており、株価の値上がりも求めて投資していると考えるべきだ。
そう考えると、株主が望むコストとしての株主資本コストを上回る利益を出して初めて経営者は
株主の期待に応えたことになる。それでは、株主の期待するコストは一体どれ位なのか。それを
どうやって計算するのか。それが問題となるようだ。
参考になるのが、伊藤レポートだ。2014年 8 月に公表された伊藤邦雄一橋大学教授(当時)を
座長として、経済産業省の「『持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい
関係構築~』プロジェクト」で、ここで望ましい ROE(株主資本利益率)の目標水準を 8%と掲げ
たことだ。当時の日本企業の ROE は欧米と比べて非常に低く、この低利益水準が企業停滞、ひい
ては日本経済低迷の原因ではないかと指摘された。株主投資コストの算定には、一定したものはな
く、難しい問題であるが、企業は株主の期待にいかに応えたかという目線にあるとすれば絶え間な
い企業と投資家とのコミュニケーションを通して考えていくべきかもしれない。上場企業では、
経営者の経営成果の成功の指標として、重要な株主資本コストではあるが、非上場企業や中小企業
ではどうだろうか。コスト意識を持つという点では、世の中にタダ金はないと言う視点から考えて
欲しいものだ。