2023/06/23世間の学校
人を読む「牧野富太郎」
ジャパン・アズ・ナンバーワンとして世界の奇跡を演じた、かつての経済大国日本は、黄金の 1960 年代から
バブル経済の終焉と共に低迷する経済は失われた 30 年という長いデフレに陥った。そして、多くの日本人が自
信喪失していった。こんな時代に勇気を与えてくれる人がいる。牧野富太郎である。
「雑草という草はない」という有名な言葉を残した日本植物学の父といわれる。今年 4 月の NHK 朝の連続テ
レビ小説「らんまん」は、彼をモデルとした物語である。牧野は、文久 2 年(1862 年)に高知の造り酒屋の名
家に生まれるも、小学校は中退、まともな学校教育がなくても幼少期からの好奇心、探究心は植物の謎にせま
り、野山を駆け巡り、探索好きの少年はやがて東京に出る。能力は高いが学歴のなさに東京大学の門は開けど、
その権威主義になじめない。「好きを仕事に」の典型的な人といえる。集めた書籍は 4 万冊を超え、集めた植
物標本は 40 万点を超えるという、とてつもない量。前代未聞のその量には圧倒される。そしてその標本や観察
記録は「日本植物図鑑」として結実し、後世の研究者の宝物となる。牧野にとって必要なのは学歴ではなく、
死ぬまで探求、研究することであり、それは好きであったからこそ、なしえた仕事ではないだろうか。なんとも
うらやましい人生であるが「好き」ということが、いかに人間を動かすのかを教えてくれる人でもある。昭和
32 年(1957 年)に亡くなるまでの 94 年の生涯はドラマ以上のすごさがある。まさに、あこがれの人そのもの
といえる。