2023/05/25世間の学校
人を読む「畑 主税(はた ちから)」高島屋百貨店の和菓子バイヤー
世の中には、いろんな人がいるが、サラリーマンでありながら、これほど自分の仕事を楽しみながらやってい
る人は殆どいないのではないか。サラリーマンは上司の命令で仕事をさせられ、会社を退職すれば給料の保証は
ないから、組織の中で上手に渡り歩いて一歩一歩出世の階段を上り詰めるしか方法がないのかもしれない。しかし、この人は違う。
1980 年に大阪で生まれ、早稲田大学を卒業して、2003 年に高島屋に入社。スタートは新宿店の洋菓子売り場
に配属。もともと、お菓子が好きだったのかも知れないが、自ら志願して和菓子売り場へ行き、以降、現在まで
和菓子一筋。全国の和菓子を探求、開発し 2008 年和菓子バイヤーとなる。毎年のように都道府県を巡る。これ
までに2000 軒以上の全国の和菓子屋さんをめぐり、約 10,000 種類以上の和菓子を食べているという。まさに「和菓子通」。
2014 年には、全国の和菓子屋さんの若旦那たちのイベント「Wagashi 若き匠たちの挑戦(ワカタク)」を主
催し、2021 年には、コロナ禍であえぐ中、和菓子を求めて全国各地を旅する気分を味わっていただこうと、「旅する和菓子」というイベントを新宿高島屋で開催。極めつけは、2017 年に「ニッポン全国和菓子の食べある記」(誠文堂新光社)を出版。そのフットワークの良さは、何処へでも行ってしまう知力、気力、体力、財力(高島屋のバックアップ?)の賜か。その好奇心恐るべし。それにしても「好きを仕事に」をまさに地で行っている人なのかもしれない。このような人を許している高島屋もすごい会社なのかもしれない。洋菓子の台頭により元気をなくしている構造不況業種といわれる和菓子の世界にも、こんなカリスマバイヤーがいれば、全く違うのかもしれない。もっと知って、もっと楽しく、もっとおいしく全国を旅するという、旅の新しい道が開けるのかもしれない。神社仏閣めぐりだけが旅ではないし、温泉めぐりだけが旅巡りでもない。こんな旅めぐりを考えてみたいものだ。