2022/11/04世間の学校
数字は語る「13 兆円」
会社法には、株主代表訴訟という制度がある。会社と取締役の関係は委託関係にある。それは、取締役は、
会社に対して、善良な管理者の注意義務や忠実義務を負う。しかし、経営する場面においては、難しい判断を
求められることも多い。その判断ミスが、会社に重大な損害を与えたとき、経営者の責任はどうなるのか。会
社が委任契約の当事者であるので、本来なら会社が経営者に任務懈怠の損害賠償責任を問うべきであるが、経
営者は会社と一体化しており、その責任を問うことは困難と考えられる。そこで、このような場合には、株主
が会社に代わって、会社の機関として経営者の責任を追及することになる。これが株主代表訴訟である。
この制度が注目されたのは 1995 年(平成 7 年)の大和銀行ニューヨーク支店。一支店の銀行員が、勝手な取
引をして銀行に損害を与えた時の取締役の責任。それにしてもすさまじい金額である。東京電力の原発事故に
よる賠償命令が旧経営陣 4 人に対して約 13 兆円。とてもじゃないが、経営者の全財産を提供しても追いつかな
い。経営者なんかになるものじゃない。経営者ほどこわい者はいない、ともいえるかもしれない。地方裁判所
の判決であり、この先高裁、最高裁へと行くものと思われるが、経営者たる者、注意すべき所である。中小企
業の場合は、所有と経営が一致しているのが殆どであるが、少数株主がいる場合や、兄弟姉妹に争いがある場
合には、株主代表訴訟が出てくることがあるかもしれない。経営者たる者、この株主代表訴訟制度の怖さを忘
れないで欲しい。