2022/07/15世間の学校
時流を読む「東京離れは進むか」
企業の主要な経営資源として、ヒト、モノ、カネがある。これらの動きを見ることによって、経済状況はある
程度わかる。今回は、そのうちヒトについて見てみよう。ヒトは何故、生まれた場所、育った場所にとどまらず
に移動するのか。より良い生活を求めて移動すると考えられる。生まれた場所、育った場所にいても就職口はな
いし、学校もない、更には恋人や結婚したいと思う人もいないとなれば、ヒトが、そこにとどまる理由はない
し、移動することが考えられる。日本全体の人口は 2008 年に 1 億 2,808 万人でピークを迎え、それから減少
に転じている。出生数と死亡数の差が人口の純増加分であるから、非婚化、晩婚化で少子化が進む一方、高齢化
は進み、死亡者も増加しており、全体としての人口は減少の一途。しかし、この人口減少は、全国一律に平均的
に減少するのではなく、地域ごとの事情で異なっている。その動きを加速させるのが、地域ごとの学校、就職問
題がある。東京圏や東京近郊は、日本全体の人口減少にもかかわらず、増加していた。地方から東京圏、首都圏
への一極集中は続いていた。そのため不動産価格は東京圏では上昇していたが、地方では下落が目立つ。しか
し、この新型コロナ禍で、この流れに異変が生じている。
総務省の 2021 年の人口移動報告によると東京 23 区は比較可能な 2014 年以降で初めて、域外から転入した人
数を転出者が上回る「転出超過」となった。どこへ行ったのかというと、埼玉、神奈川、千葉の 3 県への流出が
5 割超となっている。新型コロナ対策として、テレワーク、在宅勤務の普及が進み、東京から近隣県へと人が出
ていったようだ。これは、今後も続くのか。人口の移動は、不動産価格にも影響を及ぼす重大問題だ。北海道で
は、札幌への一極集中。東北では仙台への一極集中。九州では福岡への一極集中。こうした一極集中の動きに変
化が生じるかもしれない。この動きは「経済の基礎は人口にあり」という点からも見逃せない。