2022/02/26世間の学校
時流を読む「賃上げ税制を考える」
政府は、2022 年度の税制改正大綱で、企業の賃上げを促す税制優遇を広げるという。元来、賃金は市場におけ
る経営者(企業)と労働者の自由取引によって決まるのが原則(需要と供給の原則)のはず。それを政府は一定
率の賃上げを行う企業に対しての「ごほうび」として、税制面で優遇しようとするもの。ただし、この「ごほう
び」は法人税を支払っている法人に対して意味を持つ。赤字の法人が賃上げをすれば赤字幅が更に拡大するのみ
で、法人税を払っていないので税制優遇は受けられない。
この制度の狙いは、この 30 年間、日本の賃金は殆ど上がっていないこと。世界的にも韓国やスイスにも抜か
れ、もはや賃金面で豊かな国とはいえないこと。GDP(国内総生産)の 50%以上を占める消費が拡大してくれ
ないとGDP は伸びない。その GDP のうち、消費を伸ばすには、その元となる所得の up と更にその元となる賃
金up が不可欠。そして、賃金 up→所得拡大→消費拡大→GDPup という分配と成長の好循環が生まれるという。
この考えは、果たしてうまくいくのだろうか。
税制は経済活力の脇役である。経済活動の主役は、あくまでも経済合理性による企業行動にある。経済合理性
の第 1 のポイントは、収益である。何といっても売上を伸ばすことである。顧客がより多くの商品を買ってくれ
ること。そして、第 2 のポイントがコスト。このコストの 1 つに税コストがあるとみるべき。この点は押さえて
おく必要がある。
特に税制は状況によって変わるため、予測可能性の点でも問題がある。これを踏まえて賃上げ税制を考えたい
ものだ。ともするとベースは企業収益であることを忘れがちな点である。原点が収益の拡大を通した賃上げとい
う点を大切にしたいものだ。