2022/02/17世間の学校
時流を読む「成長と分配を考える」
成長と分配の問題が、政治問題化している。与党も野党も口をそろえて分配問題を論じる。「成長なくして分配
なし」なのか「分配なくして成長なし」なのか、その順序についても問題がある。岸田総理の目指す「新しい資
本主義」は、経済成長を実現し、その果実、成果を賃金等へ多く配分し、分配の公正を期し、もって成長と分配
の好循環を通して、日本経済を再興をさせようとするもののようだ。岸田総理は当初、分配優先の主張のようで
あったが、変化しているようにも見える。これに対して野党の方は分配優先のようだ。
ところで、成長と分配の問題は、古くて新しい問題でもある。資本主義対社会主義の冷戦時代の議論でもある。
どちらも自由且つ平等な社会の実現をめざすという点では、変わりがない。しかし、いずれを優先するかで異な
ってくる。資本主義の世界では、自由を優先し、その結果として、不平等が生じれば、それを国家の立場から是
正して、不平等が度を超さないようにしている。これは、自由な経済活動こそが国の経済成長の源泉であるとい
う信念に基づいている。
これに対して、社会主義の世界では、自由というのは幻想であり、不平等からのスタートでは、公平な競争とは
いえないとして、あくまでも平等にこだわる。資本主義も自由を原則としつつ、不平等是正に取り組み、福祉国
家へと進んでおり、社会主義も中国の経済特区のように市場経済を取り入れたりしているので、両者の歩み寄り
は起きている。しかし、この冷戦の結果は成長を通して、分配を描けた資本主義の勝利となった。一般的な競争
の時代は、これで良かったのかもしれない。しかし、デジタル時代の競争は、オール orナッシングで勝者総取
りで敗者は全敗で 7 勝 8 敗や 6 勝 9 敗という負けはない。これが従来の競争との違いであるのかもしれない。
その意味で成長と分配は新しい時代の下での別の思考方法が求められるのかもしれない。