2020/12/28世間の学校
時流を読む「見えない資産 - 無形資産の時代へ」
沢山お金を持っている人、大きな家に住んでいる人、かっこいい高級自動車に乗っている人、高価なダイヤモンドを身につけている人、高級ブランドの洋服を着ている人、一流のホテルでディナーを食べている人・・・これらは、富の象徴であり、成功の証かもしれない。しかし、これらの富を産みだしたものは何か。モノがない時代は、モノ作りで成功を得ることができた。しかし、モノが余っている時代、何が必要か。最後のフロンティアが人間の知恵。知識時代、知恵の時代、知価革命の時代といわれて久しい。しかし、現実には、人間の目に直接わかる有形物を中心に考えがち。
ところが、ここに来て企業のバランスシートに変革が見える。新しい財務分析比率として、無形固定資産倍率(無形固定資産/有形固定資産)の高い企業が、稼ぎ始めている。無形固定資産といえば、特許権やソフトウェアといった比較的少額しか有していない企業が多かった。中小企業では、殆ど見ることのなかった勘定科目かもしれない。そのため、資産ではあるが、殆ど無視できるものであり、これについての財務分析は、経営分析の対象外と考えられていた。M&A による企業買収では、有形財の評価より、のれんの評価が高い。新規による工場を立ち上げるより工場まるごと、会社まるごと買った方が早い。そこに超過収益力たるのれんがでてくる。
しかし今、多くの優良企業では、有形固定資産と無形固定資産の割合が逆転し始めた。企業行動が変わったのである。モノへの投資からヒトへの投資へ。その結果が無形固定資産の増加へ。これからの時代、大きなモノを作り、コストダウンをはかるより、小さなモノでも付加価値を高めて価格競争の優位を考えて行く時代となりつつある。そのためには、人への投資が中心とならざるを得ない。経営は「ヒト、モノ、カネ」ではなく「ヒト、ヒト、ヒト」なのかもしれない。