2020/11/25世間の学校
時流を読む「出版取次の異変」
本の一生(生まれてから、作られて、読まれて、不要になって処分されるまで)を考えると面白いことがわかる。まず、作者がいて、本の構想をして、制作を出版社に依頼する。本の出版社は、製本して完成すると、取次店に発送する。取次店が全国の本屋さんに配送して、一般の読者はその本を見て購入し、代金を支払う。これがリアルな店舗の流れだ。しかし、本が作られて、本屋さんにおかれて一般の人々が本を買い、代金を支払うとしても、売れ残った本は、どうなるか。週刊誌や月刊誌の場合、週ごと、月ごとに新しい本が出てくる。この売れ残りは当然返品となる。本屋さんの本は、本屋さんの所有する在庫ではない(岩波書店のように完全買取り制の会社もあるがこれは少数)。では、誰のものか。
本の出版流通の基本はこうだ。出版社(本の制作の講談社、集英社、小学館・・・)が本を作る。作った本を取次店(トーハン、日本出版販売(日販)・・・)に一括して発送。取次店は、本を全国の書店へ配送。書店は、売れた分だけ仕入れを計上し、代金の支払いをする。売れ残ったら返品へ。典型的な委託販売。取次店は、全国 3,000 超の出版社と約 1 万 2,000 店の書店を結ぶ「出版業界のハブ」と言われてきた。配本、在庫管理、金融まで影響力を持つ巨大な存在であった。
しかし、今、この業界に異変がおきている。その原因は、2 つある。1 つは、人々が本を読まなくなってきたこと。そのため、本が売れない。本屋さんが減っている。もう 1 つは、アマゾンの台頭を見るようにネット通販でリアルな書店の役割が低下し、町の本屋さんがなくなってきたことだ。そして、納本、返本のくり返しで、行ったり、来たりする本の移動に対して、物流コストの高騰が追い打ちをかける。本の未来だけでなく、本の流通がどうなるか。これからの出版流通について考えておくことは、流通業のあり方を考える時には、考えておくべき問題である。