決算診断は最大のビジネスチャンス! 税理士・会計事務所のための決算診断システム「社長の四季」
税理士法人T&L熱田事務所 代表社員 税理士 野澤典生
税理士法人T&L 熱田事務所(愛知県名古屋市)は、財務コンサルティングを主軸に据えた顧問先企業の経営支援に取り組みながら、経営に関する問題に限らず顧客からのあらゆる相談に応えられるワンストップのサービスの提供を目指している。
同法人代表社員の野澤典生氏に、顧客との信頼関係構築を重視した経営理念や、㈱プロスの決算診断システム「社長の四季」を活用した財務コンサルティングをはじめとする付加価値ビジネス戦略について伺った。

独立後も誠心誠意の姿勢を貫きながら成長
―― 最初に、税理士法人T&L熱田事務所の沿革からお話しいただけますか。
野澤 税理士法人T&L熱田事務所の設立は、平成17年4月です。私が独立前に勤めていた幅勇雪公認会計士事務所(名古屋市中区)が税理士法人T&L中事務所となり、ここが本店で、熱田事務所は支店になります。
税理士法人化をしたきっかけは、師匠にあたる幅勇雪先生と私に後継者がいなかったことです。そのため、万一の時に職員が困るということで、幅先生から「法人化するから一緒にやらないか」と声をかけていただきました。
―― 独立して出ていった方に、「もう一度一緒に」と声をかけるのは珍しいですね。それだけ野澤先生に対する信頼が厚いのでしょうね。
野澤 私は、32歳で独立するまでに10年間、3つの会計事務所に勤めたのですが、どの事務所ともいまでもお付き合いさせていただいています。何かあれば呼んでいただけますし、そういう時はとことんお手伝いします。そんなところから、皆さんにかわいがってもらえるのだと思います。
―― 税理士法人T&L熱田事務所の理念として掲げている「共歓の経営」につながりますね。
野澤 これは開業前からのコンセプトで、お客さまに歓んでいただくことを私たちの歓びにしようというものです。実践するのは簡単ではありませんが、基本的にその考えでずっとやっています。
―― 一生懸命お手伝いしても、なかなか評価してもらえない場合もあるのではありませんか。
野澤 結果はどうであれ、自分の納得するところまではやれたという満足感は得られます。お客さま側にも、「やれるだけのことはやってくれた」という印象は残るのか、特にクレームがくるようなこともありません。
財務を中心に顧問先を幅広く支援
―― 税理士法人T&L熱田事務所では、お客さまの経営を支援するさまざまなサービスを提供していますが、特に力を入れているのはどの部分でしょうか。
野澤 リーマンショック以降は、特に財務面や資金繰り面のニーズがもっとも多いですね。その理由のひとつとして、中小企業のオーナー経営者にとって、リーマンショック以前の10年間はよい時代だったことがあります。もうひとつは、この時期に経営者の世代交代が進んだことです。そのため、順調な時代しか知らない社長が多く、その方たちが苦手なのが財務、中でも資金繰りです。常に先を見て、資金繰りをきちんとしていこうというのは、ずっと以前からの当事務所のコンセプトですが、最近は特に資金繰りを支援する仕事が増えています。
具体的には、社長と一緒に金融機関に出向いて融資を取り付けたり、条件変更してもらったりしています。中小企業の社長にとって、こうした金融機関との交渉はなかなか難しいものですから。もともとそういう仕事をしたくて独立したので、そこが当事務所の強みというか、メーンの業務となっています。
―― まさに、中小企業のキャッシュフロー経営支援につながります。
野澤 景気が悪い時は、キャッシュフロー経営のお手伝いといえば間違いなく調達に関するものです。もちろん、会社ごとに状況は違いますから、具体的にどう支援していくかはケース・バイ・ケースですが、原則として銀行には必ず同行しています。
銀行に説明するのは社長で、こちらは分からないところをフォローするかたちをとります。そこで、こちらがしゃべりすぎることのないように、事前にシミュレーションをしています。
―― 経営者にとって、顧問の先生が隣にいてくれるのは安心感がありますね。
野澤 加えて、きちんとした資料を用意して説明すれば、銀行の支店長も、本店審査などの際に融資を打診しやすくなります。
財務コンサル業務に必須の決算診断・分析ツール
―― お客さまの経営を支援するツールとして、㈱プロスの決算診断システム「社長の四季」を導入したそうですね。きっかけは何だったのですか。
野澤 先ほども申し上げたように、私は経営支援の仕事がしたくて独立したという経緯があります。それまで勤めていた事務所で携わった、帳簿を作って税金の計算をして、適正な申告をするという会計事務所として当然やるべき業務に加えて、お客さまが困っている問題に、私たちのできる範囲で対応する、いわばコンサルタントのような仕事がしたかったのです。
とはいえ、経営コンサルタントと名乗れるほどのことはできませんから、まずは先ほどの資金繰り支援のような財務コンサルティングに的を絞りました。
それと同時に、私個人のノウハウだけでこの仕事を続けていては、成長は望めないとも考えました。独立当初はともかく、職員が増えてくれば一人ひとりに手取り足取りで教えることはできませんから、なんらかのツールが必要になります。そこで、いろいろな経営分析ツールのパンフレットを取り寄せたり、商品紹介のセミナーに出席したりするなどして、5〜6社の製品を検討しました。
そのなかのひとつが社長の四季でした。内容もよかったのですが、開発者である浅沼先生と直接お話しできたことが大きな決め手となりました。浅沼先生のお考えを聞くことで、その時に自分が抱えていたもやもやする部分を明快に晴らしていただけたからです。それですっかり惹かれてしまい、この製品に決めました。
―― 導入されたのはいつごろですか。
野澤 たしか平成4年です。
―― 複数の候補のなかで、野澤先生の感覚にぴったりマッチしていたのが社長の四季だったわけですね。
野澤 導入時もそうですが、今現在まで長く続けていられるもっとも大きなポイントは、単に症状を列挙した診断書を作る決算診断・分析ツールではないことです。それでは次につながるものがありません。しかし、社長の四季は課題を分かりやすく抽出できます。課題が抽出されれば、「ではどうすればよいか」という次の段階につなげられます。私が絶対にしたくなかったのは、「言いっぱなし」のコンサルティング
です。それをするくらいならコンサルティングをやらないほうがいいと思っていました。
もうひとつのポイントは、新たに職員が入ってきた時に、私と同じように仕事をこなすためのツールとして使えるかということです。彼らに教えやすく、使いやすいものという点を考慮すると、総合的に見てほかの製品より優れていました。

金融機関との交渉にも活用できる「社長の四季」
―― 金融機関との交渉などにも社長の四季を活用されていると伺いましたが、具体例をご紹介いただけますか。
野澤 例えば銀行から融資を受けたり、借り換えたりしたい時に、まず私たちが社長の四季を使って現状分析を報告し、そこで出てきた課題をどう解決していくかを、利益計画を使って社長自身に説明してもらいます。これによって、銀行から要求されたデータだけでなく、しっかりした事業計画や利益計画、資金繰り計画を示すことができます。
社長の四季・事業計画システムの特長は、数値計画だけでなく、その計画の実現に向けて社長が何をするかという部分のボリュームが非常に大きい点です。そのため、全部網羅するのはなかなか難しいのですが、銀行がもっとも知りたがるのはそこです。
それを社長自身の言葉で話してもらって、私たちがフォローすることで、銀行の支店長は利益計画と社長の行動計画や方針がはっきり分かります。支店長が自分の裁量で貸し出せる上限を超える金額については、法務の審査を受ける必要がありますが、その審査を通しやすくもなります。

―― そこまで見越したうえで、さまざまな資料を用意するわけですね。
野澤 銀行に説明する時は、内容のある書類が多いほうが成功する確率が上がります。こちらもだんだん慣れてきて、「これはいけそうだ」というものには特に力を入れますから、たいていはうまくいきます。
すると今度は、銀行の支店長から頼まれてお手伝いするケースも出てきます。そういうかたちで紹介されたある社長さんのケースでは、夜中まで付き合って書類作りを手伝ったこともあります。
―― 単なる数字合わせではなく、具体的な利益計画を作ることが重要ですね。
野澤 それがセットになっているところが、社長の四季のありがたいところです。とことんやると、膨大な量になります。
また、翌年からは、その仕事に同行して間近で作業を見ていた職員に担当させることができます。
―― お客さまだけでなく、職員研修のツールにもなっているわけですね。
野澤 お客さまのケアをする過程で、力をつけていけるのも大きいですね。使えば使うほどスキルがどんどん上がり、営業に行けるようにもなります。
―― 対金融機関だけでなく、お客さまの経営を支援する具体的な戦略をお持ちだということが分かります。
野澤 「餅は餅屋」ということで、まずは財務面をメーンにしっかりお手伝いさせていただこうと考えています。
少しずつ勉強はしていますが、売り上げをどう伸ばすかの指導は非常に難しいので、分かる範囲でのアドバイスにとどめています。ただ、「すべての取引は粗利で始まるから、そのことをよく考えてください」とは言っています。仕事が少ない時は薄利になりがちですから。
―― 得意分野の財務コンサルでお客さまをしっかり支援しながら、相談相手も務めるということでしょうか。
野澤 売り上げに関しては、素人だからこそ分かるリスクもあるので、できるだけリスクの提示はしたいですね。また、いくら利益があっても、会社が倒れる原因は最終的にはお金ですから、これだけはなんとしても回避するために、財務コンサルティングは基本です。

税務と他の業務を分離する効果
―― 野澤先生は㈱マップトラストという会社も経営なさっていますが、こちらはどういう役割でしょうか。
野澤 メンバーは税理士法人T&L熱田事務所とほぼ同じですが、コンサルティングの仕事は、マップトラストのほうで請けています。
つまり、会計事務所の仕事と、それ以外の仕事を分けて、後者についてはすべてマップトラストで受け持つかたちにしています。入り口で分けているので、顧問料も別々に入ります。
複数のネットワークを使い分けたワンストップサービス
―― 税理士法人T&L熱田事務所は、ワンストップ型会計事務所を標榜しています。その取り組みはいつごろからですか。
野澤 弁護士や司法書士、社会保険労務士、弁理士、不動産鑑定士などとのネットワークのほとんどは、中事務所のものです。以前勤めていたところですから、もちろんこれらの先生方を知っていますし、かわいがっていただいています。お互いに仕事を振ったり振られたりというかたちで仕事をしています。
このメーンのネットワークとは別に、私自身も小さいながら自分のネットワークを持っています。本店のネットワークは大御所の先生ばかりですから、大きな問題の時はもちろんお願いしますが、小さな話や、タイムリーに動かなければならない時、少々無理を聞いてほしい時は自分のネットワークを使います。
―― ケース・バイ・ケースで2つのネットワークを使い分けているわけですね。
野澤 例えば、ある先生のお名前を出すだけで相手の対応が変わる場合もありますし、迅速な対応がなによりも必要な場合もあります。ですから、状況を見ながら、すばやいレスポンスが求められるケースでは自分のネットワークを利用します。
ただし、ワンストップサービスの提供といっても、これらのネットワークを前面に出しているわけではありません。まずは、お客さまとの日常のコミュニケーションのなかで、もし何か問題が持ち上がったら当事務所に相談に来てくれるような関係作りを目指しています。税務に関係のないプライベートなことまで相談されれば、一人前の会計事務所だと思います。また、そのような関係を築けたお客さまは、離れることがありません。実際にそういうお客さまがかなり多いので、どんな相談を持ちかけられても対応できる体制にしているわけです。
―― そういうお客さまからご紹介が生まれることもあるでしょうね。
野澤 そうですね。それだけ信頼していただいているのはありがたいことですし、それぞれの顧問先とそういう関係を結ぶのが理想です。もしそうなれば、「会計人冥利に尽きる」といったところです。
―― お客さまとの信頼関係の構築にあたっては、野澤先生のお人柄も大きく寄与しているのではないでしょうか。実際に、お話を伺っていると、「楽しくお仕事をされているな」と強く感じます。
野澤 大変でも楽しいから続けられるのですね。職員には、「全速力で笑顔で走ろうよ」と話しています。
―― そういうスタンスは職員さんに伝わりますし、そこからさらにお客さまにも伝わっていきます。
野澤 職員が、「先生ならこう言うだろうな」と察するようになってきてはいるかもしれません。
―― 事務所の生産性向上という面で、自計化への取り組みもされていますか。
野澤 私は、自計化は押しつけるものではないと思っていますから、自計化を導入しているお客さまはそれほど多くなく、3割くらいです。
―― お客さまが自らやるものですから、自覚を促していくことが重要ですね。
野澤 そうですね。時間をかけながら、そういう方向にもっていくことは考えています。ただし、自分でやれば顧問料が安くなるといった話にはしたくありません。たまにそういう質問をされますが、「うちは変わりません」とはっきり言います。その代わり、自計化によって会計事務所の手間が減ったぶん、経営に対する支援をさらに深めていきます。
―― つまり、付加価値ということですね。
野澤 そのとおりです。こちらが代行する場合に比べて、少なくとも2週間は早く数字が分かりますから、自計化そのものは大賛成です。こちらもそれだけ早く情報が出せるので、早く相談できますし、それにともない相談の質も当然変わってきます。ここで、社長の四季のようなサービスが役に立っているのです。ですから、基本的に顧問料が下がることはないと話しています。
ディスカウントの世界に絶対に足を踏み入れないことを大前提にしていますので、安いところがいいというお客さまは離れていきますね。それはそれでいいと思います。会計事務所に対するニーズが私たちが提供したいものとは違うわけですから、仕方ないと思っています。
次世代にとって魅力ある事業体を作るには
―― お客さまに選ばれる事務所作りが求められるなかで、中期的にはどのような経営戦略をお考えでしょうか。
野澤 抽象的ではありますが、次の世代が受け継ぎたいと思うような事業体にしていくことが大事な義務だと考えています。そうしないと、法人にした意味がありません。次の世代が誰になるかはまだ分かりませんが、これから20年以内には出てきてもらわなければなりません。しかし、事業体として魅力がないと、「この事務所は私たちが受け継いでいくのだ」と思う人が現れません。ですから、これが今後の重要な戦略のひとつです。
そのために何をすべきかについては、まだはっきりと決まっていませんが、まず組織を盤石のものにしたうえで、収益の拡大を目指すことになると思います。
もうひとつは、お客さまのニーズをもっと早く察知できるようになりたいですね。残念ながら、こちらから提案しての仕事は全体の2〜3割で、残りはほとんど御用聞きのような仕事になっています。これをせめて6〜7割まで引き上げたい。そうすれば、他の事務所を何歩かリードできるのではないか思います。
もちろん、伸び悩んでいるお客さまにはこちらから積極的に働きかけていますが、堅調もしくは右肩上がりのところに対しては、どちらかというとお客さま任せの経営になっています。それはそれでよいことですが、そういうお客さまにも提供できるものはあるはずです。
例えば、「こちらの方向に進むなら、こういう選択肢もあります」とか、「こちらを選ぶ場合、このリスクは見てありますか」といったことを、聞かれる前に言えるようになればばよいと思います。
そうなれば、きっと事業体の中身もしっかりして、社会的に認知された仕事もできるようになっているでしょうし、次の世代もここで仕事をしたいと思うのではないでしょうか。
―― 働いている人に希望やモチベーションが湧いてくるお話ですね。
野澤 やはりゴーイングコンサーン(継続企業の前提)として、ずっと続かなければ法人化した意味がありませんから。
私には息子がいますが、一度も「後を継げ」と言わなかったからか、まったく別の職業に就いています。一方で、友人やお客さまの例を見ると、上から言われて継ぐよりも、自らの意思で継ぐケースのほうがうまくいくようです。ですから、本当にやりたい人がやるのが、お客さまにとってもベストだと思います。
―― 本日は貴重なお話をありがとうございました。税理士法人T&Lのさらなる躍進に期待しています。
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