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多様なツールを活用して顧問先企業の経営支援を目指す

永井洋子税理士事務所 所長 税理士 永井洋子


永井洋子税理士事務所(東京都千代田区)の所長を務める永井洋子氏は、開業当初から顧問先企業の経営支援を重視してきた。関連分野のセミナーや勉強会で精力的に活動する一方、近年注目されている経営品質のコンサルティングなども手がけている。その永井氏に、経営支援に役立つツールとして㈱プロスの決算診断システム「社長の四季」や事業計画システム「経営コーチ」、一般社団法人日本経営コーチ協会の教育コンテンツを導入した経緯や、これらをどのように活用していくかについて伺った。
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開業当初から経営支援に着目
―― はじめに、永井洋子税理士事務所の沿革を伺います。
永井 当事務所の開業は1988年です。私は大学を卒業したあと、しばらく茅場町の公認会計士事務所に勤め、在職中の1986年に税理士資格を取得しました。しかし、当時はまだ事務所もお客さまも、「男性の税理士さんじゃないと......」という時代でした。ですから、このままでは展望がないと考えて独立を決意したのです。
 ここを辞めてから開業に至るまでの一時期、八重洲の藤間秋男先生の事務所で働いたのですが、ここでの経験が大変勉強になりました。藤間先生の事務所は資産税に力を入れていて、当時は資産税対策がはやりでしたから、「こういうやり方もあったのか」と、目から鱗が落ちる思いでした。
―― その経験が、永井先生にとってのエポックとなったわけですね。
永井 私も開業後、そのはやりにいくらか便乗しましたが、その一方で「あまりお金を追求するべきではない」という武士道精神のような意識も持ってました。また、私自身の性格として、楽しく仕事ができればそれで満足してしまうところがあります。それで、もともと経営の分野に興味を抱いていましたから、そちらに取り組もうということで勉強を始めました。
―― そのひとつが経営品質ですね。
永井 はい。私がJ Q A(JapanQuality Award、日本経営品質賞)を目指したのは、本当にやりたかったからです。それで商売をしようとか、事務所を大きくしようというつもりはありませんでした。その意味では、私は怠け者といえるかもしれませんね(笑)。大きな事務所を運営されている先生が、そのために大変な努力をしたことや、責任の重さが並大抵ではないこともよく承知していますから。


研修会をきっかけに「社長の四季」を導入
―― 永井先生は、㈱プロスの決算診断システム「社長の四季」をどのような経緯で導入されたのでしょうか。
永井 きっかけは、シンクタンク藤原事務所の藤原直哉先生が開催しているリーダーシップ研修会「藤原塾」でした。ここで、米国ワシントン大学のパトリック・J・ベティン教授のリーダーシップ理論を学んでいたのです。会計事務所向けリーダーシップ研修会の主催がプロスさんということで、その活動範囲の広さに驚きました。そして、榎本会計事務所の榎本恵一先生を紹介され、榎本先生が日本経営コーチ協会の理事長であることを知って、「こんな面白いことをやっている方がいるのか」と大いに興味を惹かれました。ちょうど、通常の会計業務で提出する試算表や決算書以外に、お客さまに提供できるものを探していましたから。
―― 企業の経営支援に役立つような、新しいツールを模索されていたわけですね。
永井 そうです。当事務所は「会計王」を使っていて、それを見やすいように自分なりに工夫したり、エクセルでちょっとしたツールを作ったりしていました。経営分析ノートというものも作成して、なるべくお客さまを励ますような言葉を毎月書いたりしていました。これはこれで喜んでいただけましたし、ある程度は差別化につながりましたが、お客さまの経営に役立つものがもうひとつ欲しいと思っていました。
 そう考えると、私たちにどうしても必要となるのは数字です。数字なくして会計事務所は成り立ちませんから、その条件を満たすものを探していたところ、社長の四季に出合ったのです。
―― 今、お名前の挙がった藤原先生とは、かなり長いお付き合いだと伺っています。
永井 そうですね。そのきっかけとなったのは、大和信春先生の「和道経営」の勉強会です。
 私は自己啓発セミナーなどが好きで、ディレクターを頼まれたりすると喜んで務めていました。商売をそっちのけにして、ボランティアに近いかたちでいろいろ活動していたのです。そして、そういうセミナーで出会った方々のなかで、お互いに気が合う人とグループを作り、大和先生の教えを勉強していました。藤原先生も大和先生をご存じで、お二人が参加するセミナーに行ったことから、お付き合いが始まったのです。
 それからずっとお付き合いさせていただいていますが、藤原先生は視点が大変面白くて鋭いし、先を読む力もずばぬけていて、本当にすごい方だと思います。


経営品質コンサルティング会社を設立
―― そうした活動のなかで、経営品質のコンサルティング会社を立ち上げたのですね。
永井 はい。これは㈱コーポレート・フィロソフィー研究所(CPI)という会社です。既に中小企業のコンサルティングを何件か手がけています。
 この会社を設立するにあたっては、経営品質を勉強して日本経営品質賞にチャレンジしたい会社のお手伝いをしたいという思いがありました。もちろん私だけではできませんから、各方面の専門家を講師に招いて勉強しています。
―― 最近は、中小企業も経営品質にかなり注目していますね。特に㈱武蔵野の小山昇社長は突出した勢いです。
永井 CPIでは、財団法人社会生産性本部・経営品質協議会の許可を得て、経営品質アセスメントコースのセミナーをメーンにしていました。武蔵野さんにはそのセミナーでお世話になっているので、小山さんもよく存じ上げていますが、とてもユニークな方ですよね。


これまでになかったコミュニケーションツール
―― プロスの決算診断やマネージメント・パワーを事務所のツールに取り入れて、顧客の反応はいかがでしょうか。
永井 大変喜ばれています。特に、ビジュアルで分かりやすく説明できますから、お客さまも自社の経営のよいところはすぐに理解して安心してくださいます。また、よくないところがあれば、「こういう対策もあります」と提案することができます。そうすると、「じゃあ、商品単価をちょっと下げようか」といったように考えてくださいます。つまり、お客さまとのコミュニケーションツールになっているわけです。
―― これらのツールを初めて使った時の印象をお聞かせください。
永井 もっとも驚いたのは、ある会社のデータを入力して、この会社にはどのようなアドバイスをすればよいかを出力してもらった時です。その結果が、私の考えていたことと同じだったのです。この種のツールはほんの形式的な分析しかしない場合が多いのですが、ここまで深いものが出てくることに、本当にびっくりしました。それで、「これは役に立つ」と直観したのです。
―― 多くの会計事務所からのフィードバックによって、システムが進化しているからでしょうね。
永井 こういうところはさすがだと思いました。
―― 母体である浅沼会計事務所の、商品の質を一生懸命高めていこうという姿勢も、ほかのツールとは大きく違う点だと思います。
永井 もうひとつ素晴らしいのは、このツールを使えば、私ではなく職員がお客さまのところへ行って、私と同じように説明して、お客さまに理解していただけることです。もちろん、事前に職員がどう説明するかのロールプレーイングは行なっていますが、ここが従来のツールにはなかった最大の特長ではないでしょうか。
 このように、こちらの要件にぴったりのツールでしたので、すぐに導入を決めました。


顧客からの高評価が新規の紹介につながる
―― 社長の四季を導入して、実際に顧客へ提供し始めたのはいつごろでしょうか。
永井 導入は2009年で、早速活用しているものの、まだ数はそれほど多くありません。
 今度の5月にフル稼動することになるでしょうから、それがちょっと楽しみです。社長の四季の素晴らしさを知ったお客さまから、新たなお客さまをご紹介いただくケースも出てくると思いますから。
 現在、当事務所の新規のお客さまはほとんどが紹介ですから、既存のお客さまから高い評価をいただければ、その方々が紹介してくださる機会も増えるでしょう。
―― 東京には2万人強の税理士がいますから、数多くのライバルとの差別化をどう図るかは急務だと思います。
永井 そうですね。事務所の評価や信頼を高めるためには、さまざまなツールを用意し、それを武器としていかなければならないでしょう。
 ただし、ツールがあっても、それをうまく活用できなければ満足に戦うことはできません。例えば、私はCPIでコンサルティングを経験したことで、その難しさがよく分かりました。
 コンサルティングは相当なスキルがないと通用しません。私の場合は経営品質というツールがありましたが、そうでなければ「売り上げがどれだけ伸びたか」「どれだけ利益が上がったか」といった、具体的な実績を出さなければなりません。これらはなかなか目に見えるかたちで出ませんから、そこが難しいところです。その経験上、「これは税理士が手を出すものではないので、税理士事務所としてはやらないようにしよう」と思いました。
 そこで、やはり数字です。決算診断、そして月次でいくしかないでしょう。
―― そうなると、いかに顧客へアピールできるかが重要になりますね。
永井 自分の事務所で独自にツールを作成することもできますが、それには手間も時間もかかりますし、優れたものを作ろうとすればなおさらです。私たちのように小規模の事務所には、ちょっと現実的ではありません。

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職員の教育ツールとしても活用できる
―― 今後、社長の四季をどのように活用していくお考えでしょうか。
永井 ひと口に経営のアドバイスといっても、言葉だけでは不十分です。これを実践するためには、社長の四季のようなツールは欠かせません。それも、私だけではなく職員全員が社長の四季を使ってアドバイスできるようにする必要があるでしょう。私は、それが職員にとって一番勉強になると思います。社長の四季を使いこなせなければ経営のアドバイスを実践できないのですから、いや応なしに勉強せざるをえません。また、そういう状況に直面しないとなかなか勉強しないでしょう。
 その意味で、社長の四季は職員の教育ツールにもなると思います。すべてのお客さまに決算診断を実施して、その説明を職員がおこない、そこからご紹介につなげていくのです。
 また、これは社長の四季の活用例として教えていただいたことですが、無料で決算診断を実施して、その素晴らしさを実感してもらうことで新規のお客さまを開拓していくことも考えられますね。
―― よく分かりました。ところで、少しお話は変わりますが、ここまで取材をさせていただいて、永井先生の朗らかな話し方が大変印象的です。顧問先の社長も、永井先生からこのような話し方でアドバイスを受けたら安心感を持つのではないかと思います。
永井 私は、やはりお客さまを元気づけることが大事だと思っています。実は、私も最初のころは、「これじゃだめですね」と言うタイプでした。しかし、たとえ業績が悪くても、改善できる点はたくさんあるのですから、そういうところを指摘していくほうがよいと気づきました。これはなかなか難しいのですが、それを目指し続ければ人は元気になってきますし、実際にその会社の数字も伸びています。そうしたお客さまの成長にともない、事務所も少し伸びてきたと思います。


コミュニケーション能力を向上させる「経営コーチ」
―― 先ほど少しお話の出た日本経営コーチ協会にも参画されていますか。
永井 はい。お客さまとのコミュニケーションスキルを高めていくのは非常に大事ですから。経営コーチのようなスキルがあると、社長さんときちっと会話ができます。
 プロスさんの製品を導入すると、経営コーチに関連するいろいろな仕組みが用意されていて、それらも活用できる点が大きいですね。


日本の再生を担う会計事務所の役割
―― 永井先生は、7月15〜16日に東京で開催される社長の四季の全国統一研修大会で、パネルディスカッションに参加されるそうですね。
永井 はい。「会計事務所の新たな役割」と題した、経済人と会計人によるパネルトークです。コーディネーターが榎本先生で、パネラーは前長岡商工会議所専務理事の樋口栄治さん、㈱アステム代表取締役社長の野口敬志さん、石沢公認会計士事務所所長の石沢裕一先生、そして私の4名です。
―― 永井先生がお考えになる、これからの会計業界のあり方とはどのようなものでしょうか。
永井 私はどちらかといえば独立独歩タイプで、税理士会にもあまり出ないため、会計人同士の横のつながりを作る機会がなかなかありません。ですから、こういう場で多くの会計人の方々にお会いできるのはありがたいですね。会計人の横のつながりで中小企業と連携しながら、昨今の厳しい状況を乗り越えていこうという大きな波を作り出せれば、大変素晴らしいものが生まれるのではないでしょうか。その意味で、私がこのパネルディスカッションでお話しさせていただくことで、逆に自分も啓発されて、こういう横のつながりを作っていければよいと思います。
―― 会計人同士の横のつながりは、「日本再生を担う会計事務所の役割」という大会のテーマを考えるうえでも重要だと思います。
永井 そうですね。実は近々、最近注目されている伊那食品工業㈱さんに伺う予定ですが、同社の塚越寛会長のような方と私たち会計人がうまくつながっていけば、経営というものに対する考え方も変わるのではないでしょうか。会計人には「意気に感ずる」方がけっこう多いので、例えば「ただの金儲けじゃない」といった方向に進めば素晴らしいことになると思います。


税理士法人化で事業承継の体制づくりを目指す
―― 最後に、永井洋子税理士事務所の中期的な成長戦略やビジョンを伺います。
永井 いずれは税理士法人を作りたいと考えています。そのためには、現在の事務所の規模をある程度大きくする必要があるでしょう。
 税理士法人化の目的のひとつは事業承継です。個人事務所で、税理士がひとりだけだとしたら、所長に万一のことがあると、助手がたくさんいてもどうにもなりません。当事務所には私を含めて3人の税理士がいますから、その点は大丈夫ですし、「税理士法人にして承継していく計画を立てています」と言えば、お客さまにも安心してもらえます。
―― 税理士法人というかたちで事業承継の体制を作って、それを盤石のものにしていくわけですね。
永井 はい。さらに、10年後というとだいぶ先の話ですが、まだ引退はしていないでしょう。ただ、メーンからはなるべく外れて、裏方としてサポートに回りたいと考えています。最終的に事務所が成長していってくれれば、それがベストですね。
―― 本日は貴重なお話をありがとうございました。永井洋子税理士事務所の躍進に期待しています。