決算診断は最大のビジネスチャンス! 税理士・会計事務所のための決算診断システム「社長の四季」
浅沼経営センターグループ 代表 浅沼邦夫
株式会社プロス 専務取締役 小手森幸雄
取締役部長 町田義彦
決算診断「社長の四季」で知られる浅沼経営グループ(栃木県足利市)。そして、「決算診断」の開発・普及一筋に23年の歴を持つ同グループ会社・株式会社プロス。今回、グループ代表の浅沼邦夫氏が本誌表紙を飾るに当たり、同グループの軸である「決算診断」を取り上げる。会計業界の中でも、20年以上継続して進歩・発展してきた仕組み(ソフト)はないと言っても過言ではないだろう。今でこそ、会計事務所の付加価値業務としてその地位を築き上げた「決算診断」だが、それは浅沼会計事務所開業当時からコツコツと積み上げた経験とノウハウが原点となっている。2年後に浅沼会計事務所五十周年を迎えるという浅沼邦夫氏に、浅沼グループおよび決算診断の歴史について聞いた。
―― 50年を振り返って、まずひと言お願いします。
浅沼 50年といっても本当に恥ずかしい限りで、よくここまでできたなと思いますよ。
―― 浅沼代表が決算診断に取り組まれたきっかけから、お伺いします。
浅沼 きっかけは「お客様へのお役立ち」ですね。開業当初は、ちょうど今と同じように戦国時代のような時期でしたので、そんな中でお客様を増やすことが大事だった。若手というだけで、叩かれるようなこともありましたので、何か他とは違うことをやろうと。「この会計事務所は他と違うな」と、思われることをしなければ生き残れない。そういうところがありました。
そこで、中小企業の抱える課題を見つけ出し、問題を解決していくための方法として、決算書に目をつけたわけです。企業の通信簿である決算書の判断・分析をすれば、その企業の弱点、改善点が見えてくる。そこから判断し、その企業の良いところを伸ばし、悪いところを改善していけば良いのだと。それが決算診断のスタートになります。
―― いかに差別化を図るかということで、50年前に既に「中小企業のお役立ち」を考えたわけですね。
浅沼 「御用達」という発想なんですね。若いからフットワークが良い。顧問先にはどんどん足を運ぶ。そんな中で社長夫人の信頼を得ることが大事だということに気づいた。社長は商売で忙しい。経理をやっているのは奥さんだと。ですから、奥さんと仲良くなることが、私の原点だったと思います。私もまだ若かったし、可愛がってもらいました。そこから紹介へとつながっていったのです。かしこまって税務会計がどうこうではなく、まさに「御用達」の世界ですよ。
そういった経験からいろいろなノウハウを蓄積し、それをシステム化していったわけです。
―― それを、多くの中小企業のために役立てようと考えたわけですね。
浅沼 地方ですからそんなにお客様がいるわけではないし、税務会計だけで生き残っていくのは相当厳しい。そういう中で当時はまだまだ経営計画やマネジメント、コンサルティングといった時代でもありませんでしたから、お客様に対して何を売っていくか、ということについてかなり考えました。その時はまだ決算診断というより、まず経営計画ばかりに目が向いていましたので、当時一千万円もするコンピュータを入れて、かなり経営計画をやりましたね。
しかし、本来、経営計画というのは、決算があってこそ成り立つものです。ところが、決算では税務会計しかやっていない。経営計画を入れるといってもなかなか入らない。データをもう一度再入力して膨大な決算のデータを入れ替えていかなければならない、という大変な作業になる。そこで、決算を経営計画にうまく持って行くためにどういう方法がいいかと随分考えたわけです。その時に経営分析をデータ化してコンピュータに取り込むような仕組み、つまり決算診断の原点になるようなものができたと思うのです。
―― 決算診断をすることの意味、企業にとってのメリットは?
浅沼 決算診断によって経営の中身の正確な評価ができ、改善点を見つけ出し、具体的な対策案を出すことができる。そして、それをやることで翌年の決算がブラッシュアップされ、さらに良い決算書ができてくる。企業にとっては、融資などを受ける際に、きちんと評価される決算書ができるというメリットが生まれることになります。
―― 金融機関の評価が得られ、融資もスムーズにいくようになるのですね。
浅沼 そういうことです。経営計画といっても、結局は数字の羅列にすぎません。パッと見ても社長にはよく分からない。そこで決算書から入って、その会社の経営診断をして、「こういう状態だからこういう数値目標なんですよ」と説明してあげるわけです。むしろ、経営計画より決算診断の方が社長に喜ばれるのではないでしょうか。その延長線上で、融資を受けるための諸々の資料を作り、「診断書」としてひとつの形にしてあげるわけです。それが、「うちで稟議書を作るより、浅沼さんのところの決算診断をやった方がいい」と銀行から言われるほど、評価をいただきました。決算書と同時に決算診断提案書を金融機関に提出することで、その会社の経営状況が手に取るように分かるわけです。
―― 決算診断を見れば一目瞭然という、その作り込みですよね。
浅沼 作り込みがポイントです。社長にとっても銀行にとっても、そこに決算診断のメリットがある。非常にやりやすいというので、双方に喜んでいただける。しかも、それで銀行が「(浅沼経営に頼めば)稟議書を簡単に作ってくれるよ」と、当社の顧客の新規獲得に協力してくれるわけですから、一石二鳥、いえ三鳥というわけですね。
―― 浅沼事務所の決算診断を使っているお客様なら、金融機関としては大歓迎ということですか。
浅沼 ちょうど高度成長期で銀行がどんどん融資をしている時代でした。そうすると、個々に融資のための資料を作るのは大変だから、自動的に稟議書が作れてしまう決算診断は、大変、銀行から重宝される。それで、決算診断が金融機関から高く評価され、決算診断を活用している中小企業は、優先的に融資をしていただける。そういう流れ、ブランドが定着したことが、当社のその後の展開に大いに影響していると思います。
―― そんな中で決算診断自体も時代のニーズに合わせ、進化を遂げてきましたね。
小手森 最初はオフコン中心の時代にCOBOL言語で開発をしました。その後、ビル・ゲイツがMS︲DOSを世に出し、パソコンに移行する時期になったのを受けて、その確認のため、米国のコンピュータ展示会コムデックスへ視察に行きました。展示会場でパソコンなどの機能の素晴らしさを自分の目で見て、これからはオフコンからパソコンが主流になると確信したので、そのことをレポートにまとめて、浅沼代表へ提案しました。その結果、ハード中心からソフト中心へと価値の機軸が変わってきました。そのような変化の波の中で、毎年、「決算診断」は改良を加えながら、進化してきたと言えます。それも、母体である浅沼経営センターにおいて実際に現場で活用しているからこそ、改善に改善を重ねていくことが出来たのです。常に、浅沼経営センターからプロスへ現場での実践の声がフィードバックされているから出来ることです。
―― 常に最高のソフトをお客様に提供していくというわけですね。
小手森 浅沼代表の考えは、常に現場で実践したことを踏まえて、同じ会計業界の方々にご案内する、ということです。実際に自分たちで活用しているので、商品の中身を検証したうえで提供できる。ここが他のソフトメーカーと大きく違うところですね。商品に関しては徹底的に現場で活用できるかを確認したうえでつくり上げています。
浅沼 それが、当社の商品が息長く活用されている所以だと思います。それはやはり浅沼経営センターで徹底して全部やらせているわけです。決算というものに対してみんなが力を合わせ、ISOを取ったりして、付加価値を上げるための努力をしています。その結果、お客様に喜んでもらえる。お客様にとって真に役立つものを提供できる。そういうところから自然と浅沼経営センターは営業力を身につけたのだと思います。そして、その原点が決算にあると思いますね。決算は最大のビジネスチャンスだと言われますが、会計事務所の付加価値を上げるという点で、非常に大きな力を持っていると思います。税務会計だけでは感性やコミュニケーションは要りません。しかし、決算をうまく活用すれば、もっと創造的な仕事ができる。そして、創造的な仕事こそが職員の成長に大きく貢献するのだと思います。
―― そういった意味では、管理会計に移行する上で、決算診断は大きな役割を果たしてきたと言えますね。
浅沼 決算診断は見せて終わりというものではありません。それを見た経営者が、自社の長所、短所に気づき、経営を改善するためにはどうすれば良いかを考える一つの判断材料になるものです。そこで立ち止まって、自分のやってきたことを振り返り、「これからどうしたらよいのか」を考えさせる。その力があるんですね。
―― 決算書を使った一つのコンサルティングのような捉え方でしょうか。
浅沼 会計事務所にはコンサルティングなんてできません。じゃあ何ができるか、何をしたらよいのかということで、「文章化」を行っていったわけです。 「人に聞くほど良い知恵なし」、それがコンサルというものだと、当時、ある先生から教わりました。自分が喋るのではなく、人に喋ってもらえ、と。だから決算の数字をもとに社長が分かりやすいように文章にした。それが決算診断です。それを社長さんが読むと、「ああ、そうなんだ。これはこういうことを言っているんだよね」と逆に社長さんが解説をしてくれるのです。
―― 社長とのコミュニケーションツールの原型だったわけですね。
浅沼 そうです。社長とお話しする時にこの決算診断を介してこういう会話ができたのはすごく大きいですね。社長はどちらかというとしゃべりたがりですから。数字のことは会計事務所の説明で良いと思うんです。そのあとの経営についての諸々は社長のテリトリーですからね。やはりいろんなことをしゃべりますよ。
―― (株)プロスではここ数年、「経営コーチ」にも取り組んでいらっしゃいますね。こちらも、決算診断を活用している若手税理士が集まって、仕組みを作られているようです。「経営コーチ」について、ご説明いただけますか。
町田 「経営コーチ」という名前は経済アナリストの藤原直哉先生(シンクタンク藤原事務所所長)に命名していただきました。
これからの会計事務所はコミュニケーション能力を高めることが最重要課題である、という発想から生まれたものです。一番のポイントは、従来のような「専担者しか使えないシステム」は先細りするということ。全社的に誰でも使えるようなシステムでなければ会計事務所としてその質を維持できなくなる。そこで決算診断を、社長とやり取りするためのコミュニケーションツールとして捉える。そこにコーチング的なヒアリング技術も入れて、能力を高めていこう。そういった動きから生まれたのが「経営コーチ」です。
そこで、リーダーシップ、マネジメント、コーチングという三本柱を一つの仕組みとして、今後、会計事務所の所員の方まで浸透させる目的で、「日本経営コーチ協会」という教育機関を立ち上げました。(株)プロスとしては協会に全面的に協力させていただきながら、共に、深く・長く・多面的な「経営コーチ」の普及に努めていきたいと考えております。
―― 決算診断から枝葉が分かれ、次々と新しいシステムが開発されているようですが、最後に2年後の五十周年に向けて、浅沼代表のビジョン、決意をお伺いしたいと思います。
浅沼 2年後に当社は五十周年を迎えます。私は、会計事務所というのは常に謙虚に、原点回帰を考えながらしっかりやっていくべきだと思っています。我々はコンサルタント会社ではなく、あくまでも会計事務所。商店があちこちで疲弊し、下請けも経営悪化に苦しんでいる。そんな地域の中にあって、会計事務所は地場産業でのブランドを持つべきではないか。
「LOHAS」という言葉があります。健康を持続可能なライフスタイルをきちんと形成するというような意味ですが、私は会計事務所もLOHAS的な思考をしていくべきではないかと思います。
東京は小売業、サービス業、飲食業が多いけれども、地方は今、ますます製造、建設、運輸など、ものづくりが中心になっています。私たちの地域では特にそうです。そんな中で、会計事務所の原点を常に考える必要がある。深く、長く、多面的に考えていくと、会計事務所には「3つの課題」があります。1つ目は固定収入を増やすこと。2つ目は新規の顧問先を増やすこと。3つ目は社員教育、レベルアップです。この「3つの課題」は常に挑戦することです。
会計事務所の存続・発展の条件なのです。
―― すると、やはり人材が肝腎ですね。
浅沼 会計事務所は人が中心、人の定着と人の教育。これしかありませんね。最近は、パソコンはできるけれども、簿記を知らないという人たちが入ってきます。簿記は仕訳が大事なのですが、その仕訳が分からない。そのためにミスがたびたび発生する。確かに今はITやデジタルの時代です。しかし、会計事務所として簿記はきちんと身につけていないといけない。プロとして、そういう原点をしっかりさせなければならないと思います。
今まで会計、税務、診断と、仕組みを確立してきました。今後、これらに加えて「事業計画」の仕組みを確立させていきます。そこまでいくと、浅沼経営センターは、私の考える理想的会計事務所になるでしょう。そういう姿を2年後の五十周年に描いています。職員みんなが生き生きとしている会計事務所です。お金の経営体力ではなく、人間の経営体力をつけたい。
―― 最終的には人間力を高め、強い浅沼グループを目指そうということですね。
浅沼 長年蓄積してきた知の結晶である「ヒト・商品・サービス」などの内在する地力、伝統があります。伝統は守っていくだけでは衰退します。伝統は切り開いていく、自ら作るものです。伝統を作った「会計・税務・診断」であり、その実践行動が「その場で会計・決算診断」です。「お客様のために! お客様に喜ばれるために!」時代の変化に対応し、経営環境に適応していくことが重要です。(株)プロスは、「会計事務所の発展・繁栄のシステム」を、全国の会計事務所にご提供したいと考えています。
―― さらに良いものをご提供されることを期待いたします。今日はありがとうございました。浅沼経営センターグループのさらなる飛躍を祈念しています。
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